【vol.2 ビタミンD】骨を強くする「日光ビタミン」とは?

ママ管理栄養士による「こども栄養学」

「ビタミンD」と聞いて、ピンとくる保護者の方は、実はそれほど多くないかもしれません。

カルシウムや鉄、ビタミンCに比べると、なんとなく地味で、何の役に立つのかぼんやりしていて、自分の子どもに足りているのかどうかも気にしたことがない。 多くの方にとって、そんな存在感の栄養素ではないでしょうか。

ところが、近年の小児科や栄養学の現場では、このビタミンDが「日本の子どもたちに最も不足している栄養素のひとつ」として、急速に注目を集めています。 今回は、その理由とともに、ビタミンDが子どもの体にとってどれほど重要な役割を担っているのかをお伝えします。

【保護者の方からのご相談】

「子どもの健康診断で『ビタミンD不足の可能性があります』と言われました。 それまで気にしたこともなかったので、ショックで…。 『ビタミンDを補いたいときは、日光に当たればいい』とは聞きましたが、今の時代、日焼け対策も必要な中で、どうすればいいのか悩んでいます。」
(神奈川県・30代女性/小学2年生の保護者)

「健診で指摘されて、初めてこの栄養素に向き合うことになった」というお声は、実はこのご相談者様に限りません。
特に紫外線対策が当たり前になった今の時代、「日に当たるべきか、日差しを避けるべきか」というジレンマを抱え、どうやってビタミンDを補えばいいのか戸惑う保護者の方はとても増えています。

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【このお悩みは、一児の母でもある管理栄養士の宮﨑先生と一緒に考えます】

自身も子育てに奮闘中のママであり、食のプロフェッショナルでもある宮﨑先生。 お母さんたちのリアルな不安に寄り添いながら、今日からできるアドバイスをお届けします。

管理栄養士 宮﨑奈津季先生

宮﨑 奈津季(管理栄養士/一児の母)

大学を卒業後、医療系食品メーカーで2年間営業に従事。 その後独立し、記事執筆やレシピ開発、商品企画に携わる。 会社立ち上げも経験。
現在はプロジェクトマネージャーとして、食や健康に関するコンテンツ制作や企画、ディレクションを担当している。 その他、Webメディア編集や特定保健指導、講師業などをフリーランスとして幅広く活動中。

1. ビタミンDとは何か

ビタミンDは、ビタミン類の中でも少し特殊な存在です。 多くのビタミンは食品からしか摂取できないのに対し、ビタミンDは、皮膚に陽の光が当たることで、体内で合成することができます。 このため、ビタミンDは「日光ビタミン(サンシャインビタミン)」と呼ばれることがあります。

体の中でのビタミンDの主な役割は、大きく分けて2つあります。

ひとつは、カルシウムとリンの吸収を助ける役割。 腸でカルシウムが吸収されるとき、ビタミンDがあるかないかで、吸収率が大きく変わります。 「カルシウムをたくさん摂ったのに、骨に届かない」状態は、ビタミンD不足が原因であることも少なくありません。

もうひとつは、免疫の調整役としての役割。 一般にビタミンDは、体の中で「免疫の交通整理」をする働きを持っていて、ウイルスや細菌から体を守る力を整えてくれる栄養素として、研究が進んでいます。

2. 子どもがビタミンD不足になると、どうなるのか

ビタミンD不足が子どもの体に及ぼす主な影響は、「骨が弱くなる」と「体調を崩しやすくなる」の二つです。

くる病のリスク

極度のビタミンD不足が長く続くと、骨が柔らかくなり、足が「O脚」のように曲がってしまう「くる病」を発症することがあります。 これは、戦後の栄養失調の時代の病気と思われがちですが、近年、日本でも子どものくる病の症例が増えていることが、日本小児科学会から報告されています。

身長の伸び悩み

カルシウムが骨を作る「材料」だとすれば、ビタミンDはその材料を骨に「届ける」役割です。 せっかくカルシウムを摂っても、ビタミンDが足りないと、体に取り込まれずに排出されてしまいます。 成長期の身長の伸びにとって、カルシウムとビタミンDはセットで考える必要があるのです。

免疫低下・風邪をひきやすくなる

近年の研究で、ビタミンDが体内で不足していると、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなるという報告がされています。 免疫を支える土台のひとつとして、不足は避けておきたい栄養素だと考えられます。

気分・情緒への影響

ビタミンDは、脳内でセロトニン(情緒の安定に関わる神経伝達物質)の合成にも関わっているとされています。 そのため、主に大人を対象とした研究ではビタミンDが不足すると気分が落ち込みやすくなる、という報告もあります。

3. 1日にどれくらいのビタミンDが必要?

「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、子どもの年齢別に1日のビタミンD目安量を以下のように定めています。

年齢 ビタミンD(μg/日)
1〜2歳 3.5
3〜5歳 4.5
6〜7歳 5.5
8〜9歳 6.5
10〜11歳 8.0
12〜14歳 9.0
15〜17歳 9.0

ここで気をつけたいのが、こちらの数字は「日光を浴びることである程度合成できる」という前提に立ったもの、という点です。 室内で過ごす時間が増えた現代の子どもたちにとっては、この目安量を食事だけで満たすことが必要になってきている、と指摘する専門家も増えています。

実際に、厚生労働省の最新の『日本人の食事摂取基準(2025年版)』ではビタミンDの重要性が再評価され、目標とされる数値が全体的に大きく引き上げられました。 国を挙げて「これまで以上にビタミンDをしっかり補おう」という舵切りが行われています。

4. ビタミンDはどんな食品に入っているのか

ビタミンDは、主に魚類やきのこ類に含まれています。

  • 魚類:鮭、サンマ、イワシ、サバ、ブリ、しらす、うなぎ
  • きのこ類:きくらげ(特に乾燥)、しいたけ(特に天日干し)、まいたけ
  • 卵類:卵黄
  • その他:あん肝、乳製品(ごく微量)

中でも鮭やサンマなどの脂の乗った魚は、効率よくビタミンDを摂れる食品とされています。 きのこは、紫外線を浴びることでビタミンDが増える性質があるため、天日干しのものを選ぶと、より多くのビタミンDが摂れます。

5. 「食事だけで足りる?」現代の子どもの食生活と日光の事情

ビタミンDは、現代の子どもの生活において、二重に不足しやすい栄養素です。

魚離れの加速

ビタミンDが多く含まれる食品は魚に偏っていますが、現代の子どもの食卓では魚を食べる機会が大きく減っています。 厚生労働省の調査でも、若い世代ほど魚の摂取量が少なくなる傾向が明確に表れています。 「お肉は食べるけど魚は苦手」というお子さまは、ビタミンD不足のリスクが特に高い、と言えます。

実際、過去20年間で日本人の魚介類摂取量は大きく減少しており、2006年に「肉類」との摂取量が歴史上初めて逆転、2009年以降は完全に肉類が魚介類を上回る状態が定着しています。

【日本人の1日あたり「魚介類」摂取量の推移】

年代 1999年(平成11年) 2019年(令和元年) 魚介類摂取量の変化
全国民平均 94.3g/日 64.1g/日 約32%減
20〜29歳 83.6g /日 50.8 g/日 約39%減
40〜49歳 102.8 g/日 52.8 g/日 約49%減

(出典:厚生労働省「国民健康・栄養調査」)

特に20〜40代の働き世代で減少が顕著で、これは家庭の食卓を担う世代の魚離れがそのままお子さまの食事に反映されているとも言えます。 「魚を食べさせたい気持ちはあるけれど、買うのも調理するのも、なんだかハードルが高い」── そう感じる保護者の方が増えているのが、現代の食卓の実情です。

屋内遊びの増加

ゲーム、動画、習い事の送迎などで、外で日光を浴びる時間が大幅に減ったお子さまも増えています。 「日光浴」という発想自体が、現代の生活から消えつつあるのが実情です。

冬場の日照時間の短さ

日本の緯度では、特に11月〜2月の冬場は、紫外線の量がもともと少なく、皮膚での合成が十分に行えません。 冬場のビタミンD不足は、季節的にどうしても起こりやすい問題なのです。

つまり、「魚を食べない」「日に当たらない」「冬」が重なる時期は、子どものビタミンD不足のリスクが最も高まる、と言えます。

▼ 宮﨑先生からのメッセージ ▼

ビタミンDは、私自身も子育てを通して「これって意外と摂れていないかも」と気づいた栄養素です。 下の子が3歳になる頃、ママ友から「魚をなかなか食べてくれない」「日焼け対策はしっかりやっている」という話を立て続けに聞いて、「うちもだ……」とハッとしたことがありました。

鮭の切り身1切れ(80g)には、お子さまの1日の目安量を十分に満たすビタミンDが含まれているのですが、毎日のお食卓に鮭を出せる家庭は、現実的にはそう多くないですよね。 「ビタミンDを摂るために、何を食べさせればいいのか分からない」というお声は、栄養相談の場でも本当によくいただきます。 こちらは保護者の方の知識不足ではなく、ビタミンDが摂れる食品そのものが、現代の食生活と相性が悪いからなんです。

加えて、近年の研究では、ビタミンD不足が「気分の落ち込みやすさ」や「冬場の活力低下」にも関わると言われていて、私自身も自分や家族のことで意識するようになりました。

「ふだんのお食事から摂る努力」と「サプリメントなど補助的な手段で補う工夫」、両方を肩の力を抜いて使い分けてもらえたら、と思います。


▼ さらに深掘り!ビタミンDの「よくある質問」 ▼

Q. 日光浴をすればビタミンDは足りますか?

A. ビタミンD生成のための日光浴は、夏場の日中であれば、5〜15分程度が目安といわれています。 ただし、冬場や紫外線が弱季節、室内活動が多いお子さまの場合は、日光だけではどうしても不足しがちになります。 日差しの力を借りつつ、食品からの摂取ともうまく組み合わせて考えてみてくださいね。

Q. ビタミンDの吸収を助けるものは?

A. ビタミンDは油に溶ける性質を持っているので、油を使ったお料理と一緒に摂ると吸収率がグンと上がりますよ! 例えば、鮭のムニエルやきのこのバターソテーなど、油を少し使った調理法で召し上がっていただくのが効率的でおすすめです。

【参考文献・出典】
・厚生労働省『日本人の食事摂取基準(2020年版)』および『日本人の食事摂取基準(2025年版)』
・厚生労働省『国民健康・栄養調査』(平成11年・令和元年)
・水産庁『水産白書』および 一般社団法人 大日本水産会「魚食普及推進センター」資料
・日本小児科学会による「くる病・骨軟化症」に関する報告・提言
・文部科学省『日本食品標準成分表(八訂)』


次回のテーマ

「うちの子、最近なんとなく元気がない気がする」。 そう感じたとき、保護者の方の頭をよぎる栄養素は何でしょうか。
次回は、子どもの活力と集中力に深く関わる栄養素、「鉄」のお話をお届けします。

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